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つまのざ

妻の座

壺井 栄

「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页

青空文庫

「そんなこといわないでよ、かわいそうに。」

ミネは半分笑いながら怒った。こんなまわりの風をさけて、閑子はかくれ猫のようにこもって暮した。ミネがさそってもなかなか表へ出ようとしない。しかも、何をするでもなく、ぐずぐずとした毎日なのだ。そのこもった毎日の中で、わけもなくミネや正子にあたりちらす狂態を演じたり、野村のことをいい出しては泣きの涙で終日ふとんをかぶって寝たりする。時がたてば、自然にまた芽をふくこともあるだろうか。閑子にとっては今が生涯の冬の時期なのだ。ミネたちはできる限りの思いやりで、その傷手にふれぬよう心をつかった。しかし、閑子のくらいかげは、みんなに映って、のんきで明るかった家の中は何ともいえぬ重い空気がただよった。親しい貞子たちでさえこれまでのような気軽さではよりつけぬらしいのを、ミネはさびしく思った。貞子の長女の縁談がいよいよ決ったとなると、その忙しさもあってかこのところ貞子の足はなおのこと遠のいている。わが家の空気の重さにたえかねるとミネはふらふらと貞子の家へゆきたくなる。今日もそれだった。

「ちょっと散歩。」

衣桁のショールをとりながら、そばの箪笥の抽出をがたぴしさせている閑子にいうと、閑子はふりむきもせずに、