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つまのざ
妻の座
壺井 栄
「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页
顔を合さぬことで気がなごみ、却って気持の通じあえそうな気がして、閑子の気持を郷里へ向けようと、このところミネは考えつづけていたのだ。それがたまたまやってきた千枝にうまく見ぬかれたわけなのだが、しかし閑子にはてんでそんなつもりはなく、何とかして東京にとどまりたい意志だけを燃やしているようだった。その火は新しい道を開くためにかかげられたものではなく、ただもう、婚家からはみ出された女の姿を洗いざらい照し出すために燃やしつづけられているようだ。そのためにミネは、思いがけない人間のかくされた面を、閑子だけでなく野村や悠吉や、ミネ自身の中にも見つけ出した。皮肉や、絶望や、意地悪や、それに立向う希望のちっぽけさや。しかし立ち上らねばならぬ。まけてはならぬ。さまざまな憎悪もつまずきも新しい希望への道筋の石ころになれ。
千枝がきてから十日とたたぬときだった。閑子は急に千枝のところへゆくといい出した。片意地になっているときのくせで、閑子は片方の口じりを前の方へぎゅっとよせ、下くちびるをひどく片びっこにゆがめる。その口になったときには、ミネは気を落ちつけねばならなかった。