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ごらくろん
娯楽論
戸坂 潤
民衆と娯楽・その積極性と社会性・
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,484 字 · 29 页
誰が一体幸福を本当に否定する気になる者があろうか。それは丁度、社会運動をする者は誰だって人間の精神的自由を理想目的としていないものはないのと変らない。ただ困るのは、そういう理想目的を単に肯定しただけでは何物も始まらないということである。否そういう理想目的のただの肯定が却って現実の出発を妨げ又歪めるという点なのである。肯定的精神は大抵理想主義の精神なのだ。幸福も亦理想主義者のユートピアのようなもので、之をどんなに肯定したり強調したりしても、民衆はそれだけでは一向現実に於て幸福にならないのである。幸福となるための現実的な入口は、却ってもっと部分的な、もっと一面的な、云わば充分に周縁しない一種不完全な幸福観念にあるのである。もっと制限された、否定の可能性を欠かぬ処の、幸福観念である。処で娯楽は丁度そうしたものだ。
娯楽は決して幸福の凡てではない、そのほんの一部分にしか過ぎない、而も最も下等な種類に近い幸福でしかない、或いは寧ろ積極的に幸福と呼ぶことさえ出来ないものかも知れない。併し娯楽を入口とし娯楽を通路としない限り、幸福の社会的実現は事実不可能なのである。