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こんきはずれ
婚期はずれ
織田 作之助
「会館芸術」1940(昭和15)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,054 字 · 16 页
そうされてみれば、おたかもさすがに固い表情が崩れ、小学校の教員といえば薄給にしろまずまず世間態は良いと、素直に考えることが出来た。贔屓目にも定枝の器量は姉の義枝とそんなに違いはしなかったが、ずんぐりと浅黒い義枝と比べて定枝はややましにすんなりと蒼白く、そういう談があってみればいまそれは透き通るように白いと、改めて見直されるぐらいだった。なお先方は尺八の趣味があるといい、それも何となく奥床しいといえばいえ、かねがね筑前琵琶をならっている定枝とその点でも何か釣り合っているではないかと、これで纒らねば嘘だった。仲人は無料の散髪をして帰った。
ところが、纒ると見えて、いざ見合いという段になって、いきなりおたかは断ってしまった。仲人はちょっとあきれたが、怒った顔も見せず、姉はんをさし置いて妹御をかたづける法もなかったと筋を通して、御縁は切れたわけでもないと苦労人だった。けれどもその言葉は思い掛けずおたかには痛く、妙なところで効果があった。実はもっておたかには断るほどの理由もはっきりとはなく、強いて見合いの晴れがましさに馴れず臆したといってみたところで、それだけでは余りに阿呆らしく小娘めく。