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ふじんとぶんがく
婦人と文学
宮本 百合子
※「作品について」参照
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,792 字 · 351 页
一方では、内田信也その他の戦時成金が出来て、純金の足袋のコハゼをつけて誇示する有様もあった。所謂好景気につれて、出版企業も急速に大きくなる方向を辿り、従って、作家の原稿料もいくらか高騰したのであった。
「無名作家の日記」から発足して多くの短篇をかいていた菊池寛は、大正九年朝日新聞に「真珠夫人」を連載して、好評を博してから、段々と新聞小説に移りはじめていた。菊池寛の「屋上の狂人」と「恩讐の彼方に」そして、「忠直卿行状記」は、作品を貫く人生への態度がそれぞれに相反した本質のものであった。「恩讐の彼方に」は人間的行為の純粋な理想への憧憬を示し、「忠直卿行状記」では人間関係の、社会的地位に害されない真実さが求められた。「屋上の狂人」は、狂人なりにそれに満足しているものなら、何故はたのおせっかいでその平安を乱す必要があるか、というバーナード・ショウ風の常識を語っている。この時代から彼の「屋上の狂人」に示されている常識が伸長されはじめた。久米正雄が「破船」などの通俗小説で、大衆作家としての存在へ一歩を踏み出したのもこの時分のことである。大戦後、急に膨脹したジャーナリズムの資力と形態とは、このようにして当時中堅作家と云われた作家たちを、大幅に通俗小説の領域に吸収して行ったのであった。