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ふじんとぶんがく
婦人と文学
宮本 百合子
※「作品について」参照
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,792 字 · 351 页
貞操観念に機械的に反撥したコロンタイの「赤い恋」「偉大な恋」などが紹介され宣伝された。コロンタイの性関係に対する解釈は、既に当時ソヴェト同盟では批判され著書も売られていなかった。それだのに、日本の当時に、一時期にしろそういう誤った考えかたがつよい影響をもったのは何故であったのだろうか。
ここにも日本の旧いものと新しくあろうと欲するものとの間の錯雑した矛盾があらわれた。社会の経済、政治、文化、生活全般に亙るより健やかな関係の設定の可能が、どの程度具体的にあらわれているか、その段階に応じて期待される両性関係の改新だけを、観念の上で性急に局部的に解決しようとしても、それは現実的でなかった。しかも階級闘争の必要のためには、婦人の貞潔などは拘泥されるべきでないと云ったそれらの人々が、育ち、生きて来た伝統そのものは、昔ながらの日本の封建的な男の身がっての習慣であった。新しい言葉で云われるその階級の必要ということで、女性の貞操に対する従来の宗教めいた考えかたを否定するにしろ、それは、男性の側から、やはり奥底では昔ながらの男の性生活における利己の習俗を、ちがった理窟と形とで肯定する立場で持ち出されていたという複雑な混乱があった。