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ふじんとぶんがく
婦人と文学
宮本 百合子
※「作品について」参照
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,792 字 · 351 页
動き、進み、古葉をどんどんおとして更新しつつある歴史の足どりのなかに、それに相応ずる発現として「いのちの力」を把握する能力をもたなかった。従って、岡本かの子の主観的ないのちの感覚は、はげしさにかかわらず、自分一個の経験範囲、その伝統、その限界を超えることがなかった。その経験、伝統は、かの女によって少からず誇りをもって語られる旧家「しにせ」の環境であり、それは、どんなに溌剌としていそうでもつまりは旧い皮袋につめられた酒であった。高揚の状態が目ざましければ目ざましいほど、そのあてどない生命力の燃焼のかげは濃い頽廃に息づいた。「渾沌未分」にしろ、「やがて五月に」にしろ「母子叙情」においてさえも。
このように、明るそうでありながら真実には暗い岡本かの子の文学の境地は、まざまざと当時の「人間復興」の不幸な本質をてりかえすものであった。いのちあふるる美しさとよろこびとは、それが人間生活のたゆみない営みの上に、何かよりよいもの、より幸福になる力としてふりそそぎ、つちかわれ育ってゆくからこそである。人間の溢るるいのちが、かの子の芸術におけるように、ひたすらに溢れ、夜もひるもあふれ虹を立て風にしぶきながら、しかもそれ以上は何の積極の作用も現実生活にもたらさない流転であるならば、旺なる横溢そのものに、哀愁が伴い虚無感が伴い