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ふじんとぶんがく

婦人と文学

宮本 百合子

※「作品について」参照

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,792 字 · 351 页

青空文庫

はないだろうか。昭和十三年に発表されたこの作品は、矛盾だらけの切ない封建日本から、男女をより自由な人間らしさにおく解放運動によって結ばれた広介と明子とを登場させている。自分たち夫婦がそういう積極の意企をもつ男女であるという自覚や、家庭というものをも、それにふさわしいものであらせようとする努力で、明子は「広介と共に、通例の家庭形式とは多少ちがった形式をうち立てていたということを非常に大きな達成のように」錯覚していたと作者は書いている。だが、それは、錯覚であったのだろうか、或は、普通と多少ちがった形式のよって来た真実の動因が、広介と明子との間で、くいちがっていたのではなかったのだろうか。作中の夫妻が作家であるとか、時代的な焦躁から来る矛盾とか云うところに作者が波瀾のモメントを見ていることを、批評は外的なものばかりに眼を外してと云っているが、広介と明子という、生ける一対の男女の生涯にとって、これらの具体的な社会事情は決して単に外的なことでなく、新しい美しい両性生活を建設し、その美しさとよろこびを実証しようとして生きて来た彼等の、肉体、精神の実体的な要因なのであった。