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ふじんとぶんがく

婦人と文学

宮本 百合子

※「作品について」参照

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,792 字 · 351 页

青空文庫

ヒロの子供時代の悲しみもなくてすみ、人生観も変っていたかもしれない……。」「敗戦は日本の婦人達に参政権を贈った。『女も哀れでなくなる時が来た』とヒロは思った」と書いているのをよむと、これまでの苦しい小説の世界から、今はこの作者も歩み出せた、と思うのである。そして、あの幾冊もの小説がかかれた生活経験の上に立つからこそ、こんなに素直に、こんなにまともに、民主的な日本になってゆこうとする社会の可能を迎えている作者の心の真実をいとしく思うのである。どっさりの小説を書いては来ているが、この作者が、その作品の中で「憑きもの」の終り四行に書かれたような表現で、社会の歴史と自分の人生とを照し合わせたのは、恐らくこれが最初のことではないだろうか。

「憑きもの」は網野菊という一人の婦人作家にとって、記念すべき作品であるばかりでなく、日本の大多数の婦人が、封建性を否定する情勢の動きによって、自分たちの運命に重く憑いていたものが何であるかを知りはじめた、その真面目で、率直な記念とも云える作品であると思う。そういう意味では、他のどの婦人作家も書かなかった意義をこめた作品であった。