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ふじんとぶんがく
婦人と文学
宮本 百合子
※「作品について」参照
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,792 字 · 351 页
けれども、この時は「静に前後を思ふてかしら痛き事さま/″\多かれど、これはこれ昨年の夏がこゝろなり、けふの一葉はもはや世上のくるしみをくるしみとすべからず、恒産なくして世にふる身のかくあるは覚悟の前なり」と云っている。
一葉を、そこまで押しすすめた力は、果してただ一葉ひとりの天分とでもいうようなものだけによるだろうか。日記にはごくあらましの表現で云われているが、当時、一葉の周囲をとりかこんでいた『文学界』の人々の影響は、一葉の成長に見のがせない意義をもっていると思う。
「雪の日」を『文学界』にのせて以来、同人たちとの交際は次第にひろく近しく繁くなって来ていて、一葉が丸山町の池のある家へ住むようになってからは、一日に誰か同人たちが訪れない日はないという有様となっている。人生上のいろいろな若々しい感動、文学についての論談やヨーロッパ文学の噂も、論談風発という工合であったらしい。萩の舎では「ものつゝみの君」という名をつけられた一葉も、文学界の人々とのつき合いでは、なかなか闊達で、自在で、警句も口をついて出たらしい。二十五年ごろ内田魯庵が翻訳した「罪と罰」