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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

」

「深川? 深川と云う人に落籍されたのか、川向うの深川かい。」

「…………。」

「どうだよ、おい、知らない奴があるか。お前、仲が好くって、姉妹のようだと云ったじゃないか。姉妹分が落籍たのに、その行先が分らない、べら棒があるもんかい。

姉さんとか、小芳さんとか云って、先方でも落籍祝いに、赤飯ぐらい配ったろう、お前食ったろう、そいつを。

蒸立だとか、好い色だとか云って、喜んでよ、こっちからも、の切手の五十銭ぐらい祝ったろう。小遣帳に記いているだろう。その婦の行先が知れない奴があるものか。

知らなきゃ馬鹿だ。もっとも、己のような素一歩と腐合おうと云う料簡方だから、はじめから悧怜でないのは知れてるんだ。馬鹿は構わん、どうせ、芸者だ、世間並じゃない。芸者の馬鹿は構わんが、薄情は不可んな! 薄情は。薄情な奴は俺ら真平だ。」

「いつ、私が、薄情な、」

と口惜しく屹となる処を、酒井の剣幕が烈いので、悄れて声が霑んだのである。

「薄情でない! 薄情さ。懇意な婦の、居処を知らなけりゃ薄情じゃないか。」

「だって、貴郎。だって、先方でも、つい音信をしないもんですから、」

「先方が音信をしなくっても、お前の薄情は帳消は出来ん。