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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

振返って、額の広い、鼻筋の通った顔で、屹と見越した、目が光って、そのまま悠々と路地を町へ。――勿論勝手口は通らぬのである。め組はつかつかと二足三足、

「おやおやおや、」

調子はずれな声を放って、手を拡げてぼうとなる。

「どうしたの。」

「可訝しいぜ。」

と急に威勢よく引返して、

「あれが、今のが、その、河野ッてえのの母親かね、静岡だって、故郷あ、」

「ああ。」

「家は医師じゃねえかしらん。はてな。」

「どうした、め組。」

とむぞうさに台所へ現われた、二十七八のこざっぱりしたのは主税である。

「へへへへへ、」

満面に笑を含んだ、め組は蓮葉帽子の中から、夕映のような顔色。

「お早うござい。」

「何が早いものか。もう午飯だろう、何だ御馳走は、」

と覗込んで、

「ははあ、鯛だな。」

「鯛とおっしゃいよ、見ッともない。」

とお蔦が笑う。

「他の魚屋の商うのは鯛さ、め組のに限っちゃ鯛よ、なあ、めい公。」

「違えねえ。」

「だって、貴郎は柄にないわ、主公様は大人しく鯛魚とおっしゃるもんです、ねえ、めのさん。」

「違えねえ。」

主税は色気のない大息ついて、

「何にしろ、ああ腹が空いたぜ。」

「そうでしょうッて、寝坊をするから、まだ朝御飯を食らないもの。