轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
おんなけいず
婦系図
泉 鏡花
「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页
羽織の紐は、結んだかどうか、まだ帰らぬ。
酔ってはいないが、蹌踉と、壁へ手をつくばかりにして、壇を下り切ると、主税は真暗な穴へ落ちた思がして、がっくりとなって、諸膝を支こうとしたが、先生はともかく、そこまで送り出そうとした夫人を、平に、と推着けるように辞退して来たものを、ここで躊躇している内に、座を立たれては恐多い、と心を引立てた腰を、自分で突飛ばすごとく、大跨に出合頭。
颯と開いた襖とともに、唐縮緬友染の不断帯、格子の銘仙の羽織を着て、いつか、縁日で見たような、三ツ四ツ年紀の長けた姿。円い透硝子の笠のかかった、背の高い竹台の洋燈を、杖に支く形に持って、母様の居室から、衝と立ちざまの容子であった。
お妙の顔を一目見ると、主税は物をも言わないで、そのままそこへ、膝を折って、畳に突伏すがごとく会釈をすると、お妙も、黙って差置いた洋燈の台擦れに、肩を細うして指の尖を揃えて坐る、袂が畳にさらりと敷く音。
こんな慇懃な挨拶をしたのは、二人とも二人には最初で。玄関の障子にほとんど裾の附着く処で、向い合って、こうして、さて別れるのである。
と主税が、胸を斜めにして、片手を膝へ上げた時、お妙のリボンは、何の色か、真白な蝶のよう、燈火のうつろう影に、黒髪を離れてゆらゆらと揺めいた。