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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

」

もしそれならば、土地の様子が聞きたそうに、

「貴女、静岡は御住居でございますか、それともちょっと御旅行でございますか。」

「東京から稼ぎに出ますんですと、まだ取柄はございますが、まるで田舎俳優ですからお恥しゅう存じます。田舎も貴下、草深と云って、名も情ないじゃありませんか。場末の小屋がけ芝居に、お飯炊の世話場ばかり勤めます、おやまですわ。」

と菫色の手巾で、口許を蔽うて笑ったが、前髪に隠れない、俯向いた眉の美しさよ。

青年は少時黙って、うっかり巻莨を取出しながら、

「何とも恐縮。決して悪気があったんじゃありません。貴女ぐらいな女優があったら、我国の名誉だと思って、対手が外国人だから、いえ、まったくそのつもりで言ったんですが、真に失礼。」

と真面目に謝罪って、

「失礼ついでに、またお詫をします気で伺いますが、貴女もし静岡で、河野さん、と云うのを御存じではございませんか。」

「河野……あの、」

深く頷き、

「はい、」

「あら、河野は私どもですわ。」

と無意識に小児の手を取って、卓子から伸上るようにして、胸を起こした、帯の模様の琴の糸、揺ぐがごとく気を籠めて、

「そして、貴下は。