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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

あの母親ッて奴を冷かしに出かける肝でさ。」

「そういう料簡だから、お前、南町御構いになるんだわ。」

と盆の上に茶呑茶碗……不心服な二人分……焼海苔にはりはりは心意気ながら、極めて恭しからず押附ものに粗雑に持って、お蔦が台所へ顕れて、

「お客様は、め組の事を、何か文句を言ったんですか。」

「文句はこっちにあるんだけれど、言分は先方にあったのよ。」

と盆を受取って押出して、

「さあ、茶を一ツ飲みたまえ。時に、お茶菓子にも言分があるね、もうちっとどうか腹に溜りそうなものはないかい。」

「貴郎のように意地汚ではありません。め組は何にも食べやしないのよ。」

「食べやしねえばかりじゃありませんや、時々、このせいで食べられなくなる騒ぎだ。へへへ、」

と帽子を上へ抜上げると、元気に額の皺を伸ばして、がぶりと一口。鶺鴒の尾のごとく、左の人指をひょいと刎ね、ぐいと首を据えて、ぺろぺろと舌舐る。

主税はむしゃりと海苔を頬張り、

「め組は可いが己の方さ、何とももって大空腹の所だから。」

「ですから御飯になさいなね、種々な事を言て、お握飯を拵えろって言いかねやしないんだわ。」

「実は……」