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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

「早瀬さん、」

と近くまた呼ぶ。今しがた、(かくまって有る人だ)と串戯を云ったものを。

「室数は幾つばかりあれば可くって?」

「何です、何です。」

余り唐突で解し兼ねる。

「貴下のお借りなさろうというお家よ。ちょいと、」

「ええ、そうですね。」

「おほほほ、話しが遠いわ。こっちへいらっしゃいよ。おほほほ、縁側から、縁側から。」

夫人がした通りに、茶棚の傍の襖口へ行きかけた主税は、(菅女部屋)の中を、トぐるりと廻って、苦笑をしながら縁へ出ると、これは! 三足と隔てない次の座敷。開けた障子に背を凭たせて、立膝の褄は深いが、円く肥えた肱も露に夫人は頬を支えていた。

「朝から戸迷いをなすっては、泊ったら貴下、どうして、」

と振向いた顔の、花の色は、合歓の影。

「へへへへへ」

と、向うに控えたのは、呉服屋の手代なり。鬱金木綿の風呂敷に、浴衣地が堆い。

二人連

十

午後、宮ヶ崎町の方から、ツンツンとあちこちの二階で綿を打つ音を、時ならぬ砧の合方にして、浅間の社の南口、裏門にかかった、島山夫人、早瀬の二人は、花道へ出たようである。

門際の流に臨むと、頃日の雨で、用水が水嵩増して溢るるばかり道へ波を打って、しかも濁らず、蒼く飜って竜の躍るがごとく、茂の下を流るるさえあるに、大空から賤機山の蔭がさすので、橋を渡る時