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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

小灯の朦々と包まれた湯気の中から、突然褌のなりで、下駄がけで出ると、颯と風の通る庇間に月が見えた。廂はずれに覗いただけで、影さす程にはあらねども、と見れば尊き光かな、裸身に颯と白銀を鎧ったように二の腕あたり蒼ずんだ。

思わず打仰いで、

「ああ、お妙さん。」

俯向いた肩がふるえて、

「お蔦!」

蹌踉いたように母屋の羽目に凭れた時、

「早瀬さん、」と、つい台所に、派手やかな夫人の声で、

「貴下、上ったら、これにお着換えなさいよ。ここに置いときますから、」

「憚り、」

と我に返って、上って見ると、薄べりを敷いた上に、浴衣がある。琉球紬の書生羽織が添えてあったが、それには及ばぬから浴衣だけ取って手を通すと、桁短に腕が出て着心の変な事は、引上げても、引上げても、裾が摺るのを、引縮めて部屋へ戻ると……道理こそ婦物。中形模様の媚かしいのに、藍の香が芬とする。突立って見ていると、夫人は中腰に膝を支いて、鉄瓶を掛けながら、

「似合ったでしょう、過日谷屋が持って来て、貴下が見立てて下すったのを、直ぐ仕立てさしたのよ。島山のはまだ縫えないし、あるのは古いから、我慢して寝衣に着て頂戴。