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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

むむ、此奴等、活かして置くんじゃねえけれど、娑婆の違った獣だ、盆に来て礼を云え。」

と突飛ばすと、閑耕の匐った身体が、縁側で、はあはあ夢中になって体操のような手つきでいた英吉に倒れかかって、脚が搦んで漾う処へ、チャブ台の鉢を取って、ばらり天窓から豆を浴びせた。惣助呵々と笑って、大音に、

「鬼は外、鬼は外――」

道子

二十九

夫の所好で白粉は濃いが、色は淡い。淡しとて、容色の劣る意味ではない。秋の花は春のと違って、艶を競い、美を誇る心が無いから、日向より蔭に、昼より夜、日よりも月に風情があって、あわれが深く、趣が浅いのである。

河野病院長医学士の内室、河野家の総領娘、道子の俤はそれであった。

どの姉妹も活々して、派手に花やかで、日の光に輝いている中に、独り慎ましやかで、しとやかで、露を待ち、月にあこがるる、芙蓉は丈のびても物寂しく、さした紅も、偏えに身躾らしく、装った衣も、鈴虫の宿らしい。

いつも引籠勝で、色も香も夫ばかりが慰むのであったが、今日は寺町の若竹座で、某孤児院に寄附の演劇があって、それに附属して、市の貴婦人連が、張出しの天幕を臨時の運動場にしつらえて、慈善市を開く。