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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

」

と、じりじりと寄ると、姉夫人、思わず膝を進めつつ、

「どこの、どんな人でございますの。」

「直きこの安東村に居るんです。貞造と申して、以前御宅の馬丁をしたもので、……夫人、貴女の、実の……御父上……」

三十三

「その……手紙を御覧なさいましたら、もうお疑はありますまい。それは貴女の御父上、英臣さんが、御出征中、貴女の母様が御宅の馬丁貞造と……」

早瀬はちょっと言を切って……夫人がその時、わななきつつ持つ手を落して、膝の上に飜然と一葉、半紙に書いた女文字。その玉章の中には、恐ろしい毒薬が塗籠んででもあったように、真蒼になって、白襟にあわれ口紅の色も薄れて、頤深く差入れた、俤を屹と視て、

「……などと云う言だけも、貴女方のお耳へ入れられる筈のものじゃありません、けれども、差迫った場合ですから、繕って申上げる暇もありません。

で、そのために貴女がおできなすったんで、まだお腹にいらっしゃる間には、貴女の母様が水にもしようか、という考えから、土地に居ては、何かにつけて人目があると、以前、母様をお育て申した乳母が美濃安八の者で、――唯今島山さんの玄関に居る書生は孫だそうです。