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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

道々お摘みなすった鼓草なんぞ、馬に投げてやったりなさいましたのを、貞造が知っています。

阿母が死んだあとで、段々馬場も寂れて、一斉に二頭斃死た馬を売って、自暴酒を飲んだのが、もう飲仕舞で。米も買えなくなる、粥も薄くなる。やっと馬小屋へ根太を打附けたので雨露を凌いで、今もそこに居るんですが、馬場のあとは紺屋の物干になったんです。……」

三十四

「私は不思議な縁で、去年静岡へ参って……しかもその翌日でした。島山さんのと、浅間を通った時、茶店へ休んで、その貞造に逢ったんです。それからこういう秘密な事を打明けられるまで、懇意になって、唯今の処じゃ、是非貴女のお耳へ入れなくってはなりませんほど、老人危篤なのでございます。

私でさえ、これは一番貴女に願って、逢ってやって頂きたいと思いましたから、今迄幾度か病人に勧めても見ましたけれども、いやいや、何にも御存じない貴女に、こういう事をお聞かせ申すのは、足を取って地獄へ引落すようなもの。あとじゃ月も日も、貴女のお目には暗くなろう。お最惜い、と貞造が頭を掉ります。

道理だと控えました。もっとも私も及ばずながら医師の世話もしたんです、薬も飲ませました。