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おんなけいず
婦系図
泉 鏡花
「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页
跪いて、夫の足に接吻をする位なものよ。誰がさせるの、早瀬さん。――貴下の意地ひとつじゃありませんか。
ちっとは察して、肯いてくれたって、満更罰は当るまいと、私思うんですがね。」
机に凭れて、長くなって笑いながら聞いていた主税が、屹と居直って、
「じゃ貴女は、御自分に面じて、お妙さんを嫁に欲いと言うんですか。」
「まあ……そうよ。」
「そう、それでは色仕掛になすったんだね。」
三十七
「怒ったの、貴下、怒っちゃ厭よ、私。貴下はほんとうにこの節じゃ、どうして、そんなに気が強くなったんだろうねえ。」
「貴女が水臭い事を言うからさ。」
「どっちが水臭いんだか分りはしない。私はまさか、夜内を出るわけには行かず、お稽古に来たって、大勢入込みなんだもの。ゆっくりお話をする間も無いじゃありませんか。
過日何と言いました。あの合歓の花が記念だから、夜中にあすこへ忍んで行く――虫の音や、蛙の声を聞きながら用水越に立っていて、貴女があの黒塀の中から、こう、扱帯か何ぞで、姿を見せて下すったら、どんなだろう。花がちらちらするか、闇か、蛍か、月か、明星か。世の中がどんな時に、そんな夢が見られましょう――なんて串戯云うから、洗濯をするに可いの、瓜が冷せて面白いのッて、島山にそう云って、とうとうあすこの、板塀を切抜いて水門を拵えさせ