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おんなけいず
婦系図
泉 鏡花
「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页
貴下は安東村の貞造の馬小屋へでも引込むんだ。ざっと、まあ、これだけさ。」
と帽子で、そよそよと胸を煽いだ。
時に蝕しつつある太陽を、いやが上に蔽い果さんずる修羅の叫喚の物凄く響くがごとく、油蝉の声の山の根に染み入る中に、英臣は荒らかな声して、
「発狂人!」
「ああ、狂人だ、が、他の気違は出来ないことを云って狂うのに、この狂気は、出来る相談をして澄ましているばかりなんだよ。」
舌もやや釣る、唇を蠢かしつつ、
「で、私がその請求を肯かんけりゃ、汝、どうすッとか言うんじゃのう。」と、太息を吐いたのである。
「この毒薬の瓶をもって、ちと古風な事だけれど、恐れながらと、遣ろうと云うのだ。それで大概、貴下の家は寂滅でしょうぜ。」
英臣は辛うじて罵り得た。
「騙じゃのう、」
「騙ですとも。」
「強請じゃが。汝、」
「強請ですとも。」
「それで汝人間か。」
「畜生でしょうか。」
「それでも独逸語の教師か。」
「いいえ、」
「学者と言われようか。」
「どういたしまして、」
「酒井の門生か。」
「静岡へ来てからは、そんな者じゃありません。騙です。」
「何、騙じゃ、」
「強請です。畜生です。そして河野家の仇なんです。