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おんなけいず
婦系図
泉 鏡花
「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页
羞含んで、ぼうとなって、俯向くので話が極って、赫と逆上せた奴を車に乗せて、回生剤のような酒をのませる、こいつを三々九度と云うのよ。そこで寝て起りゃ人の女房だ。
うっかり他と口でも利きゃ、直ぐに何のかのと言われよう。それで二人が繋って、光った態でもして歩行けば、親達は緋縅の鎧でも着たように汝が肩身をひけらかすんだね。
娘が惚れた男に添わせりゃ、たとい味噌漉を提げたって、玉の冠を被ったよりは嬉しがるのを知らねえのか。傍の目からは筵と見えても、当人には綾錦だ。亭主は、おい、親のものじゃねえんだよ。
己が言うのが嘘だと思ったら、お道さんに聞いて見ねえ。病院長の奥様より、馬小屋へ入っても、早瀬と世帯が持ちたいとよ。お菅さんにも聞いて見ねえ。」
「不埒な奴だ?」
と揺いた英臣の髯の色、口を開いて、黒煙に似た。
「不埒は承知よ。不埒を承知でした事を、不埒と言ったって怯然ともしねえ。豪い、と讃めりゃ吃驚するがね。
今更慌てる事はないさ、はじめから知れていら。お前さんの許のような家風で、婿を持たした娘たちと、情事をするくらい、下女を演劇に連出すより、もっと容易いのは通相場よ。