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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

主税は四辺を見て立ったのである。

先生がその肩の聳えた、懐手のまま、片手で不精らしくとんとんと枝折戸を叩くと、ばたばたと跫音聞えて、縁の雨戸が細目に開いた。

と派手な友染の模様が透いて、真円な顔を出したが、燈なしでも、その切下げた前髪の下の、くるッとした目は届く。隔ては一重で、つい目の前の、丁子巴の紋を見ると、莞爾々々と笑いかけて、黙って引込むと、またばたばたばた。

程もあらせず、どこかでねじを圧したと見える、その小座敷へ、電燈が颯と点くのを合図に、中脊で痩ぎすな、二十ばかりの細面、薄化粧して眉の鮮明な、口許の引緊った芸妓島田が、わざとらしい堅気づくり。袷をしゃんと、前垂がけ、褄を取るのは知らない風に、庭下駄を引掛けて、二ツ三ツ飛石を伝うて、カチリと外すと、戸を押してずッと入る先生の背中を一ツ、黙言で、はたと打った。これは、この柏屋の姐さんの、小芳と云うものの妹分で、綱次と聞えた流行妓である。

「大層な要害だな。」

「物騒ですもの。」

「ちっとは貯蓄ったか。」

と粗雑に廊下へ上る。先生に従うて、浮かぬ顔の主税と入違いに、綱次は、あとの戸を閉めながら、