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よめとりにだいき

嫁取り二代記

山本 周五郎

「婦人倶楽部」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,763 字 · 23 页

青空文庫

、おめえだってこんな堅っ苦しい武家屋敷で、肩身の狭い妾暮しをするよりゃ、無頼でもれっきとした女房になるのが結句仕合せと云うものだ、まあ――そう睨まねえでこっちへ」

「お帰り※(感嘆符二つ、1-8-75)」

お笛はすっと身を退いて叫んだ。

「身を剥ごうと爪を剥ごうと貢いだのはそっちの勝手、わたしの知った事ではありませぬ、このまま帰ればともかく、――さもないと人を呼びますよ」

「面白え呼んでくんな」

伝吉はにやりと冷笑った、「おいらが生命がけで惚れた女を、横取りした奴の面が見てえ、呼びねえな、ええ呼んでみろ。――この女は私の情人でござんすと、そいつの前で立派に名乗ってやらあ、さあ呼ばねえか」

喚きながら、手を伸ばして抱きすくめようとする、お笛は危く遁れて、

「あ、あれ!」

と起った。とたんに、

「見苦しいぞ」

と叫びながら、意外にも縁先の雨戸を突外して、左手に大剣を提げた勘兵衛が現われた。――お笛はびっくり、とっさの言葉もなく立ちすくむ、

「貴様は何者だ」

勘兵衛はずいと踏込んだ。伝吉は太々しく坐り直して、

「私はその小笛の亭主でございます」

「なに亭主――?」

「亭主と申上げて悪ければ、まあ情人とでも申しましょうか、もう三年このかた夫婦同様の仲でございます、へい」