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よめとりにだいき

嫁取り二代記

山本 周五郎

「婦人倶楽部」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,763 字 · 23 页

青空文庫

「見届けた、この痴者――」

勘兵衛が叫んで大剣を掴むのと、伝吉が蝗のように跳上るのと同時だった。

「待てっ」

喚いて勘兵衛が足を出す、伝吉は、だ! と躓いたが、顛倒した余勢で自分から庭へ転げ落ちた、勘兵衛は縁先へ出て、

「生命冥加な奴め、明日とも云わず今宵の内に立退きおれ、さもないと眼につき次第斬捨てるぞ、ここな白痴者っ」

と闇に向って元気に呶鳴りたてた。――いや驚いたのなんの、さすが無頼の伝吉も胆を消して、飛礫のように屋敷外へ逃去ってしまった。

「あっぱれじゃ、よく機転が利いたぞ」

勘兵衛は座へ戻ると大機嫌で、「どうなる事かとはらはらしていたが、あそこまで引込んでゆく手際は立派な判官じゃ、じつのところわしまでが篏りそうになったわい」

「お恥しゅうござります」

衣紋をつくろったお笛は、羞いに耳まで染めながらそこへ手を突いて、

「女だてらに肌を顕わし、何とも申訳ござりませぬ、どうぞお忘れ遊ばして――」

「いいとも、外の時ならとにかく、女の操を証す必至の場合、武士なれば腹を賭けるところじゃ、――あいつめ、びっくりして煙のように消えおったわ、もう再び邪魔にはこまい、手柄じゃ手柄じゃ」