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よめとりむことり
嫁取婿取
佐々木 邦
「婦人倶楽部」1929(昭和4)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,654 字 · 175 页
斯ういうことは皆自分の徳が至らないのだと思っている。
「成っちょらん」
と呟きながら、二郎君は兄さんの部屋へ入って行った。
「何うしたんだい?」
と俊一君が訊いた。
「成っちょらんことをお父さんが仰有るんですよ」
「何だ? 一体」
「僕に螢の光で本を読まなければいけないと仰有るんです」
「それは譬だ。お前が怠けているからだ」
「譬にしても常識を欠いています。第一今頃螢はいません。夏でも螢は銀座あたりじゃ一疋五銭します。あれを五六十疋買った日には電球の何倍につくか知れません」
「そんな揚げ足を取っても駄目だよ。本気になって勉強しろ」
「ピンと来ないから成っちょらん」
と二郎君は未だ不平だった。
「実はお前のことはお母さんにこの間お願いしてある」
「道理でお父さんは文科をやっても宜いと仰有いました」
「今かい?」
「えゝ」
「ふうむ。それは大成功だったよ」
「しかし帝大の文科が好いと仰有るんです」
「それは然う来るに定っている。しかしもう一息だよ。本気になって勉強していなさい」
「来年からやります」
「お母さんからももっと言って貰うし、高円寺の兄さんにも頼んで見る」
「あれは角張りだから駄目ですよ」