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よめとりむことり

嫁取婿取

佐々木 邦

「婦人倶楽部」1929(昭和4)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,654 字 · 175 页

青空文庫

「探す当てがないじゃないか?」

「私、まさかと思うんですけれど、悪い方から言えば、もう東京にはいませんよ」

「そんなことがあるものか。お前は気を廻し過ぎる」

「ですから、まさかと思っているんですよ」

「友達のところへでも寄って突っかゝっているのさ」

「机の上に平塚さんからお手紙が来ていましたよ」

「あれは一番仲が好いんだから、東京にいれば早速問合せて見るんだけれど、他に親友はないのかい?」

「さあ。平塚さんが大阪へ行ってしまって、落胆しているくらいですからね」

「当てさえあれば、俺は直ぐに出掛けるんだが、今頃まで公園にいる筈もなし、雲を掴むような話だからね」

「十時十一時になっても帰って来なかったら、何うなさいますの?」

「帰るだろう、それまでには」

「分りませんよ」

と夫人は両手の人さし指で顳をグリ/\揉んでいた。

「兎に角、平塚さんへ問合せて見ようか? この間まで始終行っていたんだから」

「駄目でございましょう」

「大阪から帰ったところへでも寄って、つい話し込んでいるのかも知れないよ」

「でも手紙が来ていますもの。大阪からですわ」

「しかし行き違いってこともある。念の為めだ。