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よめとりむことり

嫁取婿取

佐々木 邦

「婦人倶楽部」1929(昭和4)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,654 字 · 175 页

青空文庫

「それから?」

「次は工学士のところへ片付いて、名古屋へ行っています。これは去年、いや、一昨年でした」

「その次は?」

「その次が絹子さんです」

「それじゃ四人兄妹ね?」

「はあ。僕は一人残らず知っているんです」

「皆相応のところへ片付いて、好いお子持ちですわ」

「平塚君は何ういうところから貰ったね」

と山下さんは男親として男の子を問題にした。

「理科の教授の娘さんです」

「無論帝大だね?」

「はあ」

「成程」

「帝大揃いってところはあなたのお気に召しますわね」

と母親は山下さんの気色を覗った。

山下夫婦は翌晩も翌々晩も談合を重ねた。親友の妹で悉皆身許が分っているから、この上調査の必要もない。俊一君は願いが叶って、平塚家へ絹子さん懇望の旨を正式に申入れることになった。

「しかし俊一や」

「はあ」

「俺はお前の我儘を通してやるんだから、お前も一つ俺の我儘を通してくれないか?」

「何でございますか?」

「家の嫁になるからには髪丈けは長く伸して貰いたい。それが不承諾のような娘なら、俺は何処までも反対だよ」

「分りました」

「大丈夫かい?」

「はあ。あれは先方のお父さんも反対なのですから」

「それじゃそれで宜しい」