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よめとりむことり
嫁取婿取
佐々木 邦
「婦人倶楽部」1929(昭和4)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,654 字 · 175 页
「あら、何うしたの?」
とそこへ母親が入って来た。
「春子や、春子」
と寄り添った。春子さんは顔を掩って、シク/\泣いていた。
「…………」
「俊一」
「何ですか?」
「そこへお坐り」
「…………」
「まあお坐り」
「はあ」
と俊一君は命に従った。
「お前は何を言ったの?」
「三郎が不都合だから、一寸責めてやったんです」
「我儘な人ね。お前は自分で心配をかけて置いて、他を恨むの?」
「お母さんもお父さんも心配しなくて宜いことを心配したんです」
「その口をお慎みなさいよ」
「…………」
「お父さんに申上げますよ」
と母親はこれを最後の武器とする。
「宜いのよ、もう、お母さん」
と春子さんは涙を納めた。
「俊一や」
「何ですか?」
「春子も三郎もこの間から安子の縁談で大骨折りですよ」
「知っています」
「それならお礼を言うのが当り前でしょう」
「春子殿、有難う存じます」
と俊一君は三郎君のように改まって見せた。
「厭な兄さん」
「仕方のない人ね」
と母親も持て余す。
「この上とも何分宜しくお願い申上げます」
「俊一や、好い加減になさいよ」
「はあ、はゝあ、はあ」
と俊一君は平伏して、続けさまにお辞儀をした。