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よめとりむことり

嫁取婿取

佐々木 邦

「婦人倶楽部」1929(昭和4)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,654 字 · 175 页

青空文庫

「しかし一人ばかりじゃ真正のことは分らないよ」

と山下さんは真面目だ。

「はゝあ」

「三人からさ」

と、それは弥次った奴。

「いや、少くとも四人から上さ。六人は欲しいね。男の子もあり女の子もあり、大きいのもあり小さいのもありで、真正の人生が分るのさ」

と山下さんは我が田へ水を引く。

「時に山下さん」

「何ですかね?」

「あなたみたいに無事平穏で過して来た人は共に語るに足りませんよ。私のように六人生んで三人も殺すと、人生の深刻味がシミ/″\分ります」

と子供を失った経験のあるものが主張する。

「君には一目も二目も置く」

「好い方ばかりが人生じゃありませんからね」

「御高説の通りだ。しかし深刻味はフル/\だよ」

と山下さんは平に御免蒙る。

「人生は長いです」

「無論」

「子供ばかりじゃ何人あっても未だ尋常科です。孫の顔を見なければ、真正のことは分りません」

と言う老輩が部下にある。

「同感ですな」

「しかし初孫じゃ駄目です」

「おや/\」

と山下さんもこの人には敵わない。

「まあ、私でしょうな、この会社で真正に人生の分るのは」

「それは然うでしょう。あなたが模範ですよ」

「そんなこともありませんが、昨今漸く重荷を下しました。