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よめとりむことり

嫁取婿取

佐々木 邦

「婦人倶楽部」1929(昭和4)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,654 字 · 175 页

青空文庫

「詳しいことはお目にかゝって申上げましょう。今晩御都合は如何でございましょうか?」

と幾ら仲人屋でも電話で縁談でもあるまい。

「結構でございますが、何なら此方から伺わせましょうか?」

「いや、それには及びませんよ。お二方に聴いて戴く方が早分りですから、是非私から伺います」

「それではお待ち申上げます。毎度恐れ入りますわね。我儘ばかり申上げて、本当に」

と山下夫人は気の毒になった。

帝大も商大も等しく官立だから、二者の間に上下の差別はない。衣笠さんは念の為めに問い合せたが、素よりその積りだったから、劈頭第一に、

「学歴は御註文通りですよ。商科大学を可なりのところで出ています」

と切り出した。

「はゝあ。帝大じゃないんですか?」

と山下さんは既に夫人から聞いて知っているくせに、もう苦情めいた。斯ういう分らず屋を相手に、七重の膝を八重に折ってもお世話をしようというのだから、衣笠さんも一種の病気だ。

「東京の商大ですよ。官立です」

「官立には官立ですが、あれは近頃成り上ったんですよ」

「兎に角、官立大学ですから、広い意味に於いて帝国の大学です」

とは衣笠さんも苦しい。

「然うは行かない」