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よめとりむことり

嫁取婿取

佐々木 邦

「婦人倶楽部」1929(昭和4)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,654 字 · 175 页

青空文庫

「三四年前から眼鏡がないと細いものが見えませんのよ」

「何うでございますか? お父さん。眼鏡が売れないってことはありませんよ」

「無論相対的の話さ。売れまいと言った丈けで、絶対に否定したんじゃない」

「相対的のお話にしても、眼鏡は大いに売れる方です。鉄瓶のように一度買った丈けで、一生間に合うものじゃありません」

「あなた、この間のを春子に話したんでございますよ」

とお母さんは感づかれるのを恐れた。

「近眼でも老眼でも度が進みます。その都度玉を買い替えなければなりません。又時々破れます。お父さんは学生時代から今までに幾つお買いになりましたか?」

「さあ。十ぐらい買っているかも知れない」

「近眼の人は皆然うです。眼鏡屋に随分奉公します。しかしお父さん」

「もう分った。お前と議論を始めたら果しがない」

「近眼鏡と遠眼鏡を眼鏡の全般と思召しになったんじゃ大間違ですよ。望遠鏡と顕微鏡があります。前者は天文学を創造致しました。後者は細菌学によって医学に革命を齎しました」

「分っているよ」

「それじゃ売れますか?」

「売れる/\」

「眼鏡が売れることに定らないと、この縁談は決して纒りません」