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こをつれて
子をつれて
葛西 善蔵
「早稲田文学」1918(大正7)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,970 字 · 34 页
というゴム鞠のような弾力から弾き出された言葉だったのだ。併し今日ではそのゴム鞠に穴があいて、凹めば凹んだなりの、頼りも張合いもない状態になっている。好感興悪感興――これはおかしな言葉に違いないが、併し人間は好い感興に活きることが出来ないとすれば、悪い感興にでも活きなければならぬ、追求しなければならぬ。そうにでもしなければこの人生という処は実に堪え難い処だ! 併し食わなければならぬという事が、人間から好い感興性を奪い去ると同時に悪い感興性の弾力をも奪い取って了うのだ。そして穴のあいたゴム鞠にして了うのだ――
「そうだ、感興性を失った芸術家の生活なんて、それは百姓よりも車夫よりもまたもっと悪い人間の生活よりも、悪い生活だ。……それは実に悪生活だ!」
ポカンと眼を開けて無意味に踊り子の厭らしい踊りに見恍れていた彼は、彼等の出て行く後姿を見遣りながら、斯うまた自分に呟いたのだ。そして、「自分の子供等も結局あの踊り子のような運命になるのではないか知らん?」と思うと、彼の頭にも、そうした幻影が悲しいものに描かれて、彼は小さな二女ひとり伴れて帰ったきり音沙汰の無い彼の妻を、憎い女だと思わずにいられなかった。