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こをつれて

子をつれて

葛西 善蔵

「早稲田文学」1918(大正7)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,970 字 · 34 页

青空文庫

「いや、Kは暑を避けたんじゃあるまい。恐らくは小田を勿来関に避けたという訳さ」

斯う彼等の友達の一人が、Kが東京を発った後で云っていた。それほど彼はこの三四ヵ月来Kにはいろ/\厄介をかけて来ていたのであった。

この三四ヵ月程の間に、彼は三四の友人から、五円程宛金を借り散らして、それが返せなかったので、すべてそういう友人の方面からは小田という人間は封じられて了って、最後にKひとりが残された彼の友人であった。で「小田は十銭持つと、渋谷へばかし行っているそうじゃないか」友人達は斯う云って蔭で笑っていた。晩の米が無いから、明日の朝食べる物が無いから――と云っては、その度に五十銭一円と強請って来た。Kは小言を並べながらも、金の無い時には古本や古着古靴などまで持たして寄越した。彼は帰って来て、「そうらお土産……」と、赤い顔する細君の前へ押遣るのであった。(何処からか、救いのお使者がありそうなものだ。自分は大した贅沢な生活を望んで居るのではない、大した欲望を抱いて居るのではない、月に三十五円もあれば自分等家族五人が饑えずに暮して行けるのである。たったこれだけの金を器用に儲けれないという自分の低能も度し難いものだが、併したったこれだけの金だから何処からかひとりでに出て来てもよさそうな気がする)彼にはよくこんなことが空想