轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

こをうばう

子を奪う

豊島 与志雄

「中央公論」1921(大正10)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,292 字 · 80 页

青空文庫

人形の片足がち切れて転っていた。彼はそれをくっつけてみた。

「これは駄目だ」と彼は云った。「またいいのを買ってきてあげるから、これはお捨てなさい。ねえ、またいいのを買ってきてあげますから。」

「いやよ、いやよ」と依子は泣き叫んだ。

彼は依子を腕に抱いてやった。室の中をよいよい云って歩いてやった。然し彼女は泣き止まなかった。しまいには彼も苛ら苛らしてきた。其処に投げつけたくなった。それでも我慢して、いろいろ宥めすかしてみた。依子は遂に泣き止んだが、此度は執拗に黙り込んだ。くるりと顔を外向けて反り返った。彼は腹が立ってきた。其処に依子を放り出して縁側に出て屈んだ。依子はまたわっと泣き出した。

兼子が立って来て依子を抱いた。依子はぴたりと泣き止んだ。

「あなたは子供を放り出して、どうなさるんです。」と兼子は彼へ向ってきた。

彼は黙っていた。こんなことで争ってもつまらないと思った。然しその後で、依子がそっとやって来て、「お父ちゃま。」と甘えた声で云うのを聞いた時、彼は依子が不憫なよりも寧ろ恐ろしくなった。こんなに小さくて人に媚びている! 彼はただじっとその様子を眺めた。