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こどものためにかくははたち
子供のために書く母たち
宮本 百合子
「村の月夜」にふれつつ
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,425 字 · 9 页
「子は三界の首っ枷」という俗間の言葉は、日本の従来の家庭の内部をまことにうがっている。これまで多くの母は、家のやりくり、良人の世話、非計画的に生れる子供らの世話で忙殺され、子供らの文化の与え手となるまでのゆとりはなかった。母たち自身が、ああ、どの位その望みをみたされぬ自分のお伽噺をもって、いたずらに老いて行ったことであろう。まだまだ今日といえども、母自身十分の文化的光明に浴し得ていない。次の時代の人々の成長のための贈りものとして文学を与えるところまで、母たち自身の社会的生活の内容がひろやかに高められていないのである。
貴司悦子さんの近著『村の月夜』を贈られ、それを通読して、私は、母である女のひとが自分の文学的な才能を、子供のために活かすことの自然さに打たれるところがあった。「ローラア」「にわとり」「乗合自動車」などは、直接幼い子供の感覚の内に入ってそこから描かれている自然さがある。とくに童謡「停車場」などは、大人のこしらえる童謡につきものである甘たるさ、感傷がちっともなく、子供が眼玉をぐりっとむいて、一生懸命眺めている停車場の感情がそっくり表現の中に生かされていて、たいへん爽快である。