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こどものじぶんのはなし
子供の時分の話
小川 未明
「おとぎの世界」1919(大正8)年7月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,307 字 · 11 页
そして、ただ一筋の細い路が谷の間についていました。
おじいさんについて、どんなところへ連れていかれるのかと心配しながら歩いてゆくと、はや、せみの松林で鳴いている声が聞こえました。日が暮れたら、どうなるのだろうと思うと、もう一足も歩く気になれなかったけれど、路がわからないので逃げ出すこともできなかったのであります。お母さんや、おばあさんが、私をたずねて、心配していなさるだろうと思うと、私は胸がふさがるような気がしました。
「さあ、この峠を越すと、もうじきだ。」と、おじいさんはいいました。
どんなところへゆくのだろうと、私はそればかり思われて、心配でなりませんでした。
やがて峠を越すと、三、四軒の古い粗末な家が建っていました。おじいさんは、その一軒の家に私を連れて入りました。すると、そこには肌ぬぎになって、大男が四、五人で、花がるたをしていました。そして、大きな目をむいて、けんめいにかるたをとっていました。
「こんな子供をつれてきた。」と、おじいさんは、みんなに向かっていいました。けれども、だれも相手にならずに、かるたのほうに気を取られて夢中になっていました。