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がくもんのじゆう
学問の自由
寺田 寅彦
「鉄塔 第二巻第九号」1933(昭和8)年9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,046 字 · 7 页
がありさえすれば、何でもない。しかし、そういう恵まれた環境にめぐり遭う学者は稀である。たまたまそういう環境を恵まれた人にはまた存外そういう研究に熱心な人が稀である。それで、大多数の科学者は結局どこかで誰か他人の助けをかりて生活すると同時に研究する外はない。それで、国家なり個人なりが一人の学者に生活の保障と豊富な研究費を与えてくれて、そうして好きな事を勝手に研究させてくれればこれほど結構なことはないが、そういう理想的な場合が事実上存在するかどうかを考えてみる。
ちょっと考えると、大学教授などというものは、正しくそういう立場にありそうに見えるが、事実は必ずしもそうでない。第一、教授の職責の大きな部分は学生を教える事である。それから色々な事務がある。時には会計官吏や書記や小使の用をつとめなければならない。好きな研究に没頭する時間を拾い出すのはなかなか容易でないのである。その上に肝心な研究費はいつでも蟻の涙くらいしか割当てられない。その苦しい世帯を遣り繰りして、許された時間と経費の範囲内で研究するにしても、場合によってはまた色々意外な拘束の起ることが可能である。