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がくもんのじゆう

学問の自由

寺田 寅彦

「鉄塔 第二巻第九号」1933(昭和8)年9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,046 字 · 7 页

青空文庫

である。上長官がよほどの人でない限りあまり勝手な事は許されないであろう。これも理屈はともかくこの世の事実である。

営利会社の内部に設けられた研究室の研究員も、大体において、その会社に有利な結果の出そうな研究をするのが普通である。尤も、大戦前のドイツのある化学工業会社などでは、常に数十人の学者を養って、それに全く気儘な研究をさせたという話である。五十人の研究の中でただの一つでも有利な結果が飛び出せば、それから得られる利益で、学者の五十人くらい一生飼い殺しにしても、なお多大の収益があるからとのことであった。戦後の世智辛さではどうなったかそれは知らない。とにかく日本などでは、まだなかなかそういう遠大な考えで学者の飼い殺しをする会社はそう多数にはあるまいと思われる。あるいはそこまでに学者の腕前に対する信用が高められないためかもしれない。そうだとすればその責任がどっちにどれだけあるか、それもよく分からない。しかし、いずれの場合にしても、例えばある会社の研究員が、その会社の商品の欠点を仔細に研究して、その結果からその商品の無価値あるいは有害なことを発見したとする。