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あんごのしんにほんちり
安吾の新日本地理
07 飛騨・高山の抹殺――中部の巻――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,650 字 · 54 页
こう考えると、両面スクナの分身の片面は天皇たるべき人であったに相違ないように思われる。そして、それが天武天皇によって亡ぼされたこともほぼ確実でしょう。なぜなら、天武帝はヒダの主たる神を大和へうつして一年に何回も勅使をさしむけて拝ませており、しかもその神が風の神と大忌みの神だから、タタリを怖れての策であるのは一目リョウゼンであります。
ところが、官撰国史はこの二柱の神がヒダの神だということを決して書かないのです。元来大和に祭られた神であると人々に信ぜしめようとしている。これは壬申の乱がヒダで行われたにも拘らず、ヒダということが完全に隠されている、ということを裏づけるものだろうと思われます。
そしてホンモノのヒダの神様にはなかなか位をやらなくて貞観九年にはじめて従五位下をやり、延喜式神名帳では、ヒダは全部でたった八ツの神で、それも全部小ですよ。大社というのが一ツもない。実に冷遇虐待せられておって、そのくせ別の神様として大和に祭られた方は大も大、大そうな扱いで伊勢の外宮の分身となっておるのであります。
こうして、天智、弘文(大友皇子のこと)、天武と日本史上に於てはじめてホンモノの人皇が定まったらしい重大きわまる時期に、ヒダの国だけは一度も史上に名が出たことがなかったのです。