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あんごのしんにほんちり

安吾の新日本地理

坂口 安吾

07 飛騨・高山の抹殺――中部の巻――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,650 字 · 54 页

青空文庫

舟をすてた最初の聚落がスワで、乗鞍を越えた信濃側にもスワがある。

しかし、乗鞍に位山の古い呼び名があって現に山神崇拝のあとの巨石が多く見られ乗鞍権現もあるけれども、信濃側の信仰からみると、この氏族がヒダから山越えした最初はむしろ穂高で、穂高を梓川まで下ッた現在の穂高神社の地がこの氏族の信濃開拓の交通要所、重大な分岐点をなしているらしい。つまりこの氏族の発展根拠地点でもある。松本の平野へ、またスワへ、伊那へ。遺跡から判断して三ツの古代人の発展方向のその重大な分岐点、聖なる根拠点たる穂高神社。又その山上たる穂高の峯は信濃側の信仰からは一ノ山と見られるのが自然かも知れん。そして船津へついた一行が登るとすれば、乗鞍よりも穂高の方を選ぶのが自然かも知れないのである。その二ツの中間のアワ峠が一番古くひらけた道のようだ。

この氏族は船津上陸当初は谷沿い道よりもむしろ尾根づたいに歩いていたと見られる。穂高中心に北には立山へ、南には乗鞍、御岳へと彼らは尾根づたいに往復して立山と御岳から低地へ降り、もしくは中間の峠を降りた。御岳を尾根づたいに南下すると三国山と云って、ヒダ、シナノ、ミノ、三国の境、そのヒダ側が竹原村で、そこが尾根から低地へ降りる南限の地点と想像される。