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あんごのしんにほんちり

安吾の新日本地理

坂口 安吾

06 長崎チャンポン――九州の巻――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,780 字 · 43 页

青空文庫

彼が自分の手で辛うじて完成した徳川幕府というものを守るために、他の一切に対して示した猜疑、警戒というものは蟻の出入口もないほどの堅固なもの。鉄砲という新兵器への断圧などは序の口で、大きな河には橋を造らせず、渡し舟まで禁じるという警戒万全主義であるから、鎖国だとか切支丹宗門断圧は彼の主義政策の当然な一ツの結論。わが子親類縁者参謀功臣に至るまでまず一切を疑るということをもって政治の前提としているのだもの、外国勢力をトコトンまで国外追放にしたのは彼の統治方針の結論としては奇も変もない自然なことで、切支丹だからどうこうという、切支丹という宗教の内容に重点のある禁圧ではなかったであろう。秀吉の禁令の理由が日本は神国であるというような、多少は外国を異端視した国粋思想からの反撥があるのに比べて、家康の方は他の一切を疑り、進歩の一切を排するという警戒万全主義から発した当然きわまる処置の一ツにすぎなかったのである。

だから秀吉の禁令は多分に感情的でもあるから、その激する時は甚しくても、一面に気まぐれで、例外も抜け道もあるけれども、家康の方は算術の答として割りだされたような無感情な結論で、気まぐれも例外も抜け道もない。