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あんごのしんにほんちり

安吾の新日本地理

坂口 安吾

10 高麗神社の祭の笛――武蔵野の巻――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,723 字 · 45 页

青空文庫

何扉だか何教室だか知れんが、このへんは日本津々浦々、実にラジオの悪影響ならんか。コマ村のことは何をきいても全然知らんのである。

「あなたは、コマ村の何を知っているのかね?」

「ハイ。コマ村へ行く道を知っています」

飯能の女中サンに完璧にからかわれてしまいましたな。

自動車をよんでもらってコマ村へ出発する。飯能の女中サンに運転を御依頼したわけではなくて、タクシーの運転手もコマ村へ行く道については心得があったようだ。たった十分か十五分ぐらいの平凡な道である。

出発がおそかったので、コマ神社に到着したのは、タソガレのせまる頃であった。

社殿の下に人がむれている。笛の音だ。太鼓の音だ。ああ、獅子が舞いみだれているではないか。

なんという奇妙なことだろう。

「今日はお祭りだろうか?」

自動車を降りて、私たちは顔を見合せたのである。

しかし、お祭りにしては人間の数がすくない。むれているのは概ね子供たちで三四十人にすぎない。だが獅子の舞いは真剣だし、笛を吹く人たちもキマジメであった。

「明日がお祭りだそうです。今日のはその練習だそうです。なおよく社務所へ行ってきいてきます」