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あんごしたん

安吾史譚

坂口 安吾

05 勝夢酔

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,002 字 · 27 页

青空文庫

そこで当主にたかっていた仙之助という親類の一人が、大川丈助という小金持を連れてきて用人にスイセンした。仙之助は大川丈助から五両の鼻グスリをもらってスイセンしたのである。

知行所の者どもがこの用人抱え入れに反対で、夢酔に止めさせてくれと頼んだから夢酔がかけあってやると、たった五両の鼻グスリに目がくらんで、地主にいらざることを云う奴は地所を立ち退けと言う。勝手にしやがれ、と夢酔は仕方なく見て見ぬフリをしていた。

鼻グスリをきかせて貧乏旗本の用人を志願するぐらいだから、丈助には考えがあったのである。用人に抱えられると、主人から金を貸してくれと云われるままにハイハイと立て替えてやる。相当立て替えさせたからこのへんで丈助をクビにしようと追い出しにかかったところが、もとより丈助の方が役者が数枚上なのである。

「ただ今までのお立替えが利をつもってこれだけになっております」

勘定書を差出した。それが合計三百三十九両である。

このベラボーな、しかし明細な計算書をいったん主人に渡しておいて、主人が酒に酔った晩を見すまして盗み返して焼きすてた。

こうしておいて丈助は老中太田備後守にカゴ訴をしたから事メンドウになった。