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あんごしたん
安吾史譚
02 道鏡童子
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,437 字 · 27 页
全ての勢いは女神のものなのである。
ここではただ天皇が道鏡を怖れた事実を知れば足りよう。つまり、この事実の裏側に知りうることは、藤原氏一族が道鏡を女帝に近づけたとき、有徳の高僧としてだけではなく、天智天皇の皇孫たる特別の人としてでもあったに相違ないからであろう。押勝と道鏡とは比較すべからざる別個のものだ。道鏡はその現れた時から、天皇にとっての最大の強敵であった。
そしてそれ以上廃帝の原因を探す必要はない。ただ天皇の怖れが事実となって現れただけのことである。果して上皇の意志であろうか。藤原氏一門の手になった正史の語るところでは、女帝が道鏡を法王とするために天皇をしりぞける必要はありうるであろう。しかし、藤原氏一門が自分に都合のよい天皇をたてるとすれば、己れの仇敵だった押勝のたてた天皇をしりぞけるのは道鏡排斥以前の作業でなければならない。
現天皇をしりぞける工夫はいかに? といえば、確実な方法は一ツあるのみである。つまり、女帝に対して、次のように進言し、女帝の心をうごかし、定めることである。即ち、
「道鏡禅師は天智天皇の御孫で、その皇胤たる資格に於ては、天武天皇の御孫たる現天皇と同格以下のものではございません。