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あんごしたん
安吾史譚
01 天草四郎
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,351 字 · 23 页
すべての物が自然に亡びつつあるときに、これはいささか異様きわまる景観であった。
このあたりの農民は乱によってあらかた死滅したので、無住の地となり、荒れるにまかせ、白骨は風雨にさらされて十年の年月がすぎた。十年後に他国から農民を移住せしめたというから、今の住民の先祖はこの乱には関係がないのであるが、全滅した前住民の霊を怖れるような意識がはたらいてか、偶然か、ともかく、ほぼ原型のまま畑になっている。陣立ての図面に合せて攻撃防戦の様子を思い描くのは容易である。
英雄の盛衰を語るツワモノどもの夢の跡とちがって、ここに白骨をさらした多くの人々は悪政に苦しみ、生きる喜びも目当ても失い、のッぴきならぬ暴動にかりたてられた農民たちであった。その白骨をとりかたづけて再び耕やしはじめた人々には、宗門も異り、なんら血のツナガリもないとは云え、土と共に生きる人々の魂に通じて鳴りひびく何かはあろう。英雄の夢の跡は茫々として詩情をたたえているかも知れぬが、ここにはそのように大ゲサなものは何もない。小ヂンマリとした廃城の地形をソックリ残しているとはいえ、実に平凡に、よく耕やされた畑。