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あんごしたん
安吾史譚
01 天草四郎
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,351 字 · 23 页
しかし、それが案外天人四郎の真相の一端を巧みにつかんでいるのではないかとも思うのである。
楼上で碁をうっていたという。楼とはどんなものであるか分らない。原城はすでに当時から廃城で、この城をこわして島原城へ移転した。そのとき石垣まで持ち去って地形だけ残ったのみの廃城であった。一揆軍はそこへ木材をはこんで小屋がけし竹矢来を作って石垣や塀に代えた。だから楼と云っても俄か造りのバラックに相違ないが、とにかく楼上で碁をうっていたというのが、支那の帝王の威風を見るようで、おもしろい。
そこに必要なのは絶対に威風であろうから、紙や板で間に合せた碁盤ではなかったろう。天皇旗と同じように、天人旗だか四郎旗だか知らぬけれども、とにかく四郎の旗というものがあって、それが分捕られて今日に伝わっている。油絵師の誰かが泥絵具で天使とカリスを書いたかなり美しいもので、このような四郎の附属品から見ても、彼の日用品は決してバラック的ではなかったに相違ない。その点にかけては注意が払われ、謀略の主たるものがそこにこもってもいるのだから、すべての人の目をおどろかすにたる凝った品々であったに相違ないと思われる。