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あんごこうだん
安吾巷談
06 東京ジャングル探検
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,016 字 · 48 页
そのうちに、ここがバクチ宿のようなものになった。
稲荷界隈を縄張りにしている香具師の親分が見廻りに来てここで食事をするうち、ここの内儀に目をつけた。四十ぐらいの、ちょッと渋皮はむけているが、外見だけ鉄火めいてポンポン言いたがる頭の夥しく悪い女だ。善良な亭主を尻にしいて、棺桶に片足つッこんでからに早う死んだらえゝがな、というようなことをワザと人前で言いたてたがる女だ。
香具師の親分ときいて、このバカな内儀が何年間つけたこともないオシロイなどぬりたくり、チヤホヤしたから、それからは親分が見廻りにくるたび御休憩の家となり、親分御食事中はほかのお客はお断り。門前払いだ。
やがて親分が酔っ払う。親分と内儀だけ奥に残して、乾分たちは退散し、食堂のオヤジも二階の碁席へ追ッ払われる。オヤジは腰がまがって、二階へ上ってくる時は、一段ごとに手も突きながら、ウウ、ウウ、ウウ、と這ってくる。関さんという碁席の番人で、これもヘタクソなのを相手に、血迷った馬のような青筋をたてて、ただもう猛烈な速力で碁を打ちはじめるのである。ハハア、香具師の親分が来てるな。追っ払われたな、ということが、常連にはすぐ分るのである。