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あんごこうだん

安吾巷談

坂口 安吾

09 田園ハレム

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,267 字 · 27 页

青空文庫

予言者は世に容れられないものである。美神アロハも一応予言者ぶったフリをしてみたかったのだ。そこには使徒巷談師というものが現れて、やがてその福音を説くことが定められていたせいらしい。

一時世に容れられなかったのだ。というのは田ンボのマンナカの一軒屋という高貴の風俗が異教徒どもに分らなかったからである。彼らは銀座にのんだくれて、円タクをよびとめる。

「小岩! いくら」

「千円」

「八百円にまけろ」

畜生! 円タク代、八百円か! 翌日、恨みをむすんで帰る。オノレ、円タク。異教徒は恨み深い。

東京駅前から市川行というバスにのるのである。田ンボのマンナカの一軒屋の前へ、自家用車のごとくピタリと止る。この料金、三十円。美神アロハの配慮にソツはないのだが、異教徒は酔っぱらうとムヤミに気が大きくなって、翌朝円タクを呪うのである。

こういう次第で、異教徒どもは離れ去り、ハレムに閑古鳥がなき、三百人の美姫のうち、目ぼしいのは去ってしまった。これ即ち、やがて巷談師の現れて福音を説けばなり、という予言を行うためである。

私がでかけたとき、美姫は百六十何名に減っていた。あんまりお客がこないので、エエめんどくせえや、というわけか、それとも美姫の新入生でイヴニングが間に合わないのか、美姫の半数ぐらいは、昼の服装で踊っていた。